山本夏彦さん
はぼくの最も大切な著者の一人で、山本さんの「無想庵物語」や「私の
岩波物語」「最後のひと」などは日本人として絶対必読だと思っています。
「今でこそ証券会社というが実はあれは株屋である。株屋は一夜にして
大尽にもなるが、乞食にもなる。そこにあるのは投機である。それを承知
で売買するならいいが、素人がこつこつためた金をこれに投ずれば、
あとで泣きを見るにきまっている。いくら損したと言っても勝敗は兵家の
常である。泣いて訴えても自業自得だと相手にされないから、素人は手を
だしてはならぬと固く禁じられていた。
それと新聞は知りつつ主婦やOLに財テクをすすめたのである。株を売って
儲け、儲けた金をさらに動かして儲けた売れないもと女優たちの実話を
載せたのである。しんぶんがこの欄(ウィークエンド経済)を常設しては
ならぬゆえんである。
かねがね私は日本語を日本語に翻訳している。証券会社は株屋、銀行は
金貸、不動産屋は千三つ屋と訳すとおのずと正体があらわれる。野村、
山一以下の証券会社の全盛時代にそう言って私はイヤな顔をされた。今は
されない。晴れて株屋と言えるのは私の欣快とするところだと書いたのは
実は十なん年昔である」
と、文春文庫「愚図の大忙し」所集の「ウィークエンド経済」というエッセイ
に書かれたのが9年ほど昔である。
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