文化はあっという間に断絶する
教育が問題だ、とぼくだって思う。大仁田氏の教育問題が奈辺にあるか
を詳らかにはしないが、教育はずっと昔から問題だと、ぼくは思ってき
たのである。もちろんぼくごときが何か言ってもろくなことは出てこな
い。そこでまたまた山本夏彦氏をひく。
「むかし和辻哲郎が吉田茂から聞いた話だという。強く記憶していると
和辻は次のように書いていた。
マッカーサーが吉田に問うて「自分は若年のころ日露戦争に従軍して
多くの将星を見た。彼らはそれぞれ人物に風格があったが、四十年ぶり
で日本の将軍に接して、同じ人種同じ民族だとは思えなかった。これは
一体どういうことか」。
吉田が和辻たちの「文教審議会」の席上これを語ったのは、教育上の
由々しい問題だと思ったからだろうと和辻は察した。もっとも日露戦争
は勝ちいくさ、今回は負けいくさだから割引しなければならないと言え
ば言えるが、それにもかかわらず同じ民族とは思えないという観察は正
しいと、吉田とともに和辻は思わずにはいられなかった。前者の代表的
な将軍は東郷(平八郎)乃木(希典)、後者の代表的な将軍は東条(英機)
荒木(貞夫)たちと言っていいだろう。
明治の将星は子供のころから中国の古典で育って、成人してから西洋
を学んだ。昭和の将軍はもう中国の古典を学んでいない。学んだとして
もそれは深く根をおろしていない」
「俗に断絶というのは戦前と戦後の間に生じたように思われているが、
私は明治にはじまって今まったく終ったところだと見ている」
「近衛文麿(明治二十四年ー昭和二十年)はしばしば羽織袴であらわれ
たが、古武士の風格なんかなかった。変装しているように見えた。私た
ちは東洋の古典を去って西洋の古典につけばいいと思って、その双方を
失ったのである。私はこれを「にせ毛唐」と呼んで、自分がその一員で
あることを残念に思っているが、芥川の誕生からでもすでに百年たって
いる」
なんか昔この同じ文章をこの日記で引用したかもしれないな(^^;)。で
も根源的なことですから何度でも。
いまの日本を作っている社会的常識のかなりの部分は1970年以降にその
もとがある。テレビで誰かが日本の伝統、みたいなことを言ったら、中
国韓国の人たちが昔からいっている、みたいなことを言ったら、その伝
統や昔の直接の根源がいつなのか、を確かめたほうがいい。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (1)
最近のコメント