« エネルギー | トップページ | 民主党 »

2002年9月24日 (火)

歌舞伎


雀右衛門さんの八つ橋を見た。
「籠釣瓶花街酔醒」という芝居である。こう書いて「かごつるべさとのえいざめ」と読む。籠釣瓶は刀の銘である。切れ味が「水も溜まらぬ」という洒落だそうだ。花街は吉原のことで、これをさとと読むのは、いまでも京都の祇園あたりで花街を里、それ以外を町と呼ぶのと同じだろう。酔醒をえいざめと読むのは古く酔うはえうと読んだから。これは佐野次郎左衛門という田舎の豪商がはじめてたずねた吉原で全盛の花魁八つ橋に一目ぼれ、すっかり馴染みとなり身請け話までおきるが、そうなると金づるがなくなると困った八つ橋の間夫や親代わりの男が八つ橋を責めて満座の中で次郎左衛門に愛想尽かしをする。その場では堪えた次郎左衛門、田舎に帰って身辺整理の後、妖刀籠釣瓶を携えて四ヶ月ぶりに八つ橋に会いに行く。もともとが最上の客だから八つ橋は謝る。次郎左衛門は最初変わらぬ優しい風情だったが刀を抜いて八つ橋を斬り、恥をかかされた恨みを雪ぐ。次郎左衛門は痘痕面で二目と見られぬ醜男、けれど金払いがよく礼儀正しく田舎ものだが粋もわかる、という吉原にとってはこれ以上ない上客。八つ橋も痘痕面を醜いと思って愛想尽かししたわけではない。無理やり強いられてしたのだ。八つ橋一人が悪いわけではない。
だから八つ橋は冷酷で嫌な女になってしまってはいけない。そこのところが雀右衛門丈は素晴らしかった。美しく感情もこまやかだが、それだからこそ次郎左衛門の心の闇の底の底までは見抜けない花魁を完璧に演じていた。なんと82歳の雀右衛門。ジャッキーと呼ばれる粋な役者である。

|

« エネルギー | トップページ | 民主党 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌舞伎:

« エネルギー | トップページ | 民主党 »